【考察】売場レイアウトに込められた仕掛け
第5回『ショッピングセンター(SC)編』

※本記事は全5回構成の一部です。
シリーズ一覧はこちら
このシリーズのねらい
リアル小売店において
利益を最大化するノウハウのひとつは、
「チェーンストア展開」であることは
異論がないと思います。
チェーンストアは店舗を大量に出店して
商品を大量に販売することで
売上規模の拡大を行っています。
言い換えれば、
同じタイプの店舗=規格が標準化した
店舗を
作らなければ
大量出店はできません。
標準化とは
例外をできるだけ最小化することで、
建物の構造、工法、設備、仕上げ、
デザイン等の設計を基本セットとし
パターンを作ることです。
(注文建売住宅でいう
「標準仕様」と同じです)
本シリーズは、
店舗の売場レイアウトを通じて
業界を読み取らんとする試みです。
売場レイアウト設計はお客様にとっては
スムーズなお買物・サービスが
提供される場であり、
店舗にとっては合理的な品揃え、販売、
営業、運搬、移動が行える場として
設備、装置などを配置する行為です。
また、レイアウトは
利用可能な売場面積の
制約の上に構築されています。
それでは、以上を踏まえた上で、
個々の業態について
考察していきましょう。
-100.jpg)
SC業態の定義とは?
ショッピングセンター(SC)業態は複数の業種・業態を掛け合わせて集積した特殊で複雑な業種で、一言では分類しづらい商業施設です。
“SCとは、ひとつの単位として計画、開発、所有、管理運営される商業・サービス施設の集合体で、駐車場を備えるものをいう。その立地、規模、構成に応じて、選択の多様性、利便性、娯楽性等を提供するなど、生活者ニーズに応えるコミュニティ施設として都市機能の一翼を担うものである。”
これが日本ショッピングセンター協会による定義です。
言い換えると、SCはGMSや百貨店などの大型店を核店舗とし、専門店・飲食店・映画館などの複数店を計画的に構成し管理・運営した施設です(但しアウトレットモールなどの例外もあります)。
コンセプトは、”街づくり”
SCを所有するのは、デベロッパーと呼ばれる開発業者です。デベロッパーのビジネスは、街づくりのプロデュースです。SCは単独の商業施設ではなく、多くのテナントやサービス、キャンペーンなどを組み合わせて、一つの空間価値を創出する複合的な施設として機能しています。したがって、そのコンセプトも「街づくり」にあるといえます。
「SCの街づくり」は1991年に制定された特定商業集積整備法(正式名称:特定商業集積の整備の促進に関する特別措置法)においても後押しされています。
一口にSC業態といっても、立地やテナント構成等によって設計思想は大きく異なり、売場配置や動線の仕組みにも違いが生まれます。こうした特性を整理すると、大きく分けて以下の5つのタイプに分類することができます。
| 規模・商圏・提供する機能や 来店頻度による分類 | 内容(要約) | |
|---|---|---|
| CSC | 地域型 Community shopping center | 一次商圏は5km。 中規模商圏を想定した地域の商業機能の核になるSC。 延床面積は3千~10.6千坪。 キーテナントはGMS、SM、DS、DGSが2店舗以上入ることが多い |
| RSC | 広域型 Regional shopping center | 一次商圏は8~25km。 広域商圏を想定した大型SC。延床面積は12千~24.3千坪。 核店舗は百貨店やGMSなどの大型店。 |
| SRSC | 超広域型 Super regional shopping center | 一次商圏は8~40km。 百貨店、GMS、専門店のフラッグショップなど複数の大型店業態と、 100を超える専門店、フードコート、レストラン街、ホテル併設、 スポーツ施設、映画館の大型SC。延床面積は24.3千坪以上。 |
| NCS | 近隣型 Neighborhood shopping center | 一次商圏は5km。(SM単体出店の場合は一次商圏は500m~2kmなので集客強力)。 NSCは生鮮食料品や日用雑貨などの最寄り品を扱う店舗を備えた小型のSC。 SMやDGSが集客の核となる。延床面積は0.9千~4.5千坪。 |
| アウトレットモール | ディスカウント型 outlet mall | 一次商圏は超広域、自動車で片道1.5時間=60km以上。 メーカーが季節外商品や旧型品、難あり商品や デッドストックなどの処分を目的として運営しているテナントで構成。 メーカー取引がある小売店との競合に配慮して、 繁華街を避け、地価の安い郊外立地が多い。 延床面積は15千坪以上。大型は30千坪を超える。 |
※用語の出典:「ショッピングセンター用語辞典」一般社団法人 日本ショッピングセンター協会
SCの面積を説明する際の指標として、主に用いられるのが「延床面積」です。これは建物全体の合計床面積(駐車場、通路、倉庫、バックヤード含む)のことで、建物の規模を示す指標です。
一方、「店舗面積(賃貸面積)」はテナントに貸し出している面積を指し、主に法規制や出店計画の文脈で用いられます。これは大店立地法で定められた基準です。
このようにSCには色々な種類がありますが、レイアウトのポイントとしては、消費者の総合生活に対応する仕掛けを集積した核店舗とテナントの配置=思わず回遊してしまう空間デザインが挙げられます。
ここからは各分類の特徴的なレイアウトを見ていきましょう。
SC業態の基本形ともいえるCSC・RSC・SRSCタイプのショッピングセンターでは、大型の核店舗を両端に配置し、その間を結ぶ主通路の両側に専門店・飲食店・映画館などをテーマで固めて配置し来店客が自由に歩き回れるような空間を形成しています。
NSCの敷地内には駐車場を囲むように店舗が並び、来店客は目的の店の近くに駐車できます。
住宅街に密接した立地から、回遊性を重視した他のSCと比べて日常利用が占める割合が多く、短時間で目的店舗にアクセスできる利便性がより重視されていることが窺えます。
アウトレットモールは、サーキット状の通路に沿って多様なブランドショップが並ぶ「専門店街」タイプのSCです。複数の出入口が分散配置され、どの位置からでも回遊に参加できる構造となっており、施設全体を歩きながら複数店舗を巡る利用が前提とされています。
明確な核店舗を持たず、各テナントが対等に配置されている点も大きな特徴です。
性格バランス

A:ショートタイムショッピング ⇔ ロングタイムショッピング
B:ワンウェイコントロール ⇔ 回遊性
C:手厚い接客 ⇔ セルフサービス傾向
D:中食指向 ⇔ 内食指向
内食は家庭で食材を調理して食べること。
中食は外で調理された食品を持ち帰って食べること。
E:小売吸引力 (商圏狭い ⇔ 広い)
考察
本記事では、「ショッピングセンター」と「ショッピングモール」を同じ意味の同義語としています。書籍や各種資料、業界関係者へのヒアリングを踏まえても、両者を明確に区別する定義は必ずしも整理されていないのが実情です。
ただ、「モール(mall)」の語源は18世紀のイギリスにおける木陰のある散歩道(回遊路)にあり、この言葉自体が「歩きながら回遊する空間」を意味しています。その意味では、「モール」という概念はSCのレイアウトの本質を端的に表すものだといえるでしょう。
また、SCの通路は緩やかに湾曲(カーブ)していることが多いのが特徴です。これは顧客の購買意欲を刺激し、滞在時間を延ばすための設計です。
湾曲した通路形状には、来店客の行動をコントロールするいくつかの効果があります。
・曲がり角の先に対する期待感を生み、来店客を自然と奥へと誘導する
・視界に広がりが生まれ、多くの店舗や施設が目に入りやすくなることで予定外の立ち寄りを促す
・曲がるごとに景色が変化するため、飽きずに回遊できる空間演出となる
一方、SMの通路は直線的に設計され、目的の商品に短時間で到達できるよう工夫されています。
また、売場の奥に「磁石売場」を配置することで来店客を店内奥まで誘導するなど、SCとは異なるアプローチが採られています。
-1-1024x576.jpg)
このように、SCとSMでは来店客の行動を前提とした設計思想が大きく異なり、その違いは通路構造にも明確に表れています。
本シリーズでは業態ごとの特徴を見てきましたが、売場レイアウトは単にスペースの効率を追求するだけではなく、「どのように買い物をしてもらうか」という意図のもとに設計されています。
普段何気なく歩いている売場も、その構造や動線に込められた仕掛けを意識してみると、新たな発見があるかもしれません。
本シリーズが、日々の売場づくりや店舗・業態理解の一助となれば幸いです。
各業態の違いをより横断的に整理したい場合は、こちらの記事↓も是非ご覧ください。
-1024x579.jpg)
小売の勘ドコロ vol.005:『テナントと館(デベロッパー)の関係』
ショッピングセンター(SC)は、一般的な路面店や単独商業施設とは異なり、館(デベロッパー)が施設全体のコンセプトやテナント構成を計画的に設計している点が大きな特徴です。各テナントは個別に営業する店舗でありながら、施設全体の集客力や回遊性を高める「一つの売場」の構成要素として位置づけられます。そのため営業時間や販促、売場運営の一部において館のルールや調整が働く場合も少なくありません。こうしたテナントと館の協調関係によって、SCは単独店舗では実現しにくい集客力と売場の多様性を生み出しています。
-1-300x169.jpg)
-300x170.jpg)
-1-300x171.jpg)
-300x169.jpg)
-1-300x169.jpg)
-1-300x169.jpg)