小売業 新入社員と指導者の必修科目!発注業務の基本と実践 第3回『発注ツールの理解と部門別発注(グロサリー・日配等)』

※本記事は全4回構成の連載の一部です
。シリーズ一覧はこちら
※本シリーズは、株式会社アール・アイ・シー刊
「食品商業 2026年4月号」掲載の
弊社執筆記事をもとに再編集したものです。
日々の発注業務に欠かせない機器(ツール)について知る
発注業務は、状況に応じてさまざまな機器を使い分けながら行われます。使用する機器によって確認できる情報や操作方法が異なるため、それぞれの特長を理解しておくことが重要です。
売場で即時に判断するための機器と、実績確認や設定作業を行うための機器では役割も異なります。こうした違いを踏まえることで、より効率的な発注が可能になります。
実際にどのような機器が用いられているのかを見てみましょう。

①…HHT端末・PDA端末
HHT(Hand Held Terminal)やPDA(Personal Digital Assistant)は、主に回転率が高く、頻繁な補充を必要とする商品を扱う売場での「穴あき発注」に使用します。携帯性に優れ、売場を巡回しながらその場で発注できる点が特長です。一方で、画面が小さいため確認できる情報は限定的です。ハンディ端末とも呼ばれます。
②…タブレット端末(またはGOT)
主にデイリー商品や生鮮売場で使用されます。発注に必要な情報を1台で確認できるため、棚前で状況を見ながら発注判断を行う際に有効です。GOT(Graphic Operation Terminal)は、タッチパネルで操作する情報端末のことを指します。また近年では、専門店や衣料品売場において、商品提案や在庫確認などの接客業務にもタブレット端末が活用されるケースが増えています。
③…事務所の共用パソコン
店舗の事務所(売場の裏側にある、来店客の目に触れないバックヤード)に設置されているパソコンは、実績照会やPOSの価格管理、グループウェアの利用など、後方業務で使用される共用機器です。店舗従業員間で共有しながら利用されます。
④ スマートフォン(携帯電話)
近年では会社貸与のスマートフォンをPDAの代替として活用する企業も増えています。但し、画面サイズの制約により表示できる情報量が限られるほか、文字が小さく視認しづらい等、発注業務に最適化されていない操作性を課題として挙げる声もあります。

部門ごとの発注についてより詳しく知る
各部署で運用上の共通手順もありますが、取り扱う商品の性質や売場の運用によって、発注の考え方や判断基準は大きく変わります。特に、賞味期限や消費期限、商品の鮮度といった要因は発注数量やタイミングに大きく影響します。
ここからは、各部門の特徴を押さえながら、それぞれの発注のポイントを整理していきましょう。
グロサリー・日用雑貨・ノンフード部門の場合
比較的少人数で運営される一方で、商品回転率が高い商品を多く扱う部門です。発注作業に入る前に、前日夜間までの入荷商品を全て売場へ補充し、陳列棚やゴンドラ(※)の状況を確認しながら、「穴あき発注」を行うのが基本です。
発注には主に操作性に優れたHHTやPDAが用いられ、欠品している商品のJANコードをスキャンすることで、効率的に発注を行うことができます。
※ ゴンドラ什器とは、売場中央などに配置される商品陳列棚のこと。通通路を挟んで両面に商品を陳列できる構造で、多くの商品を効率的に展開するために用いられます。棚板の高さや数を調整することで、商品特性・売場計画に応じた柔軟な陳列が可能です。
日配部門の場合
消費期限が短く、商品回転の速い要冷商品を扱う部門です。発注作業前に行う「補充作業」や「前進陳列(※)」などの基本的な売場管理は、グロサリー・日用雑貨・ノンフード部門と共通しています。一方で大きな違いは、「週間発注」と「確定発注」という2段階の発注方式を採用している点です。
消費期限が短い商品は、急な数量増減に対応しづらく、取引先側でも原材料の手配や製造準備が間に合わない場合があります。そのため、あらかじめ「週間発注」を行い、1週間先までの大まかな発注数量を共有することで、取引先は計画的に原材料や人員の準備を行うことができます。その後、直前の発注締め日に「確定発注」を行います。取引先は最初の計画数量から若干の増減があったとしても、事前に材料の手配が出来ている状態であれば、問題なく製造・納品が可能です。
※前進陳列とは、棚の奥にある商品を手前に移動させ、売場の見栄えを整える作業のこと。商品の取りやすさを保つとともに、欠品状況を把握しやすくする目的があります。現場によってフェイスアップ陳列、前出し陳列とも言います。
日配部門のEOB発注
日配部門の2段階発注において、以前は週間発注数を紙の発注台帳に記載後、スキャンして確定発注数へ修正し、締め時間に間に合わせるといった方法が現場では用いられていましたが、近年は台帳を電子化した「EOB(Electric Order Book)発注」が主流となっており、GOTやタブレット端末、PDAなど複数の機器が活用されています。
EOB発注では、週間発注数の予測に際し過去実績・PI値・来店客予測を基にした「予測起案」を行うのが一般的です。担当者が手動で修正を行わない場合、この起案数がそのまま週間発注として取引先へ連携されます。その後、期限までに数量の最終調整を行い、正式な発注数量が確定します。
以下は、EOB発注端末の画面イメージです。
(※下記はあくまで一例です。実際の表示内容や操作画面は、企業や使用する端末の仕様によって異なります。)

表示する情報は小売企業ごとに柔軟に設定可能であり、過去の発注台帳や現在のEOB発注の運用を見直しながら、現場でより使いやすい形へと最適化されています。
このように端末の特性や各発注メソッド、実際の現場での運用方法を適切に捉え、必要に応じて改善していくことで、精度の高い売場づくりに繋がります。
次回は、生鮮3部門の発注などについて詳しく見ていきます(※近日公開予定)。


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