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セルフレジ×AIで小売店はどう変わる?-デメリットと向き合い、一歩先の店舗運営へ-

セルフレジとAI アイキャッチ画像
目次

セルフレジの普及背景

日本におけるセルフレジの普及は、2020年以降の新型コロナウイルス感染症の流行が大きな転機となりました。緊急事態宣言下では、非接触で会計ができることや飛沫感染対策といった衛生面への要請が高まり、多くの小売店でセルフレジの導入が進みました。

その後、新型コロナウイルスは2023年5月に5類感染症へ移行し、事態は落ち着きを見せましたが、生産年齢人口の減少を背景とした人手不足への対応が、引き続きセルフレジの普及を大きく後押しすることとなりました。

東京都における「商品販売従事者」の有効求人倍率は、2026年4月時点で正社員が3.47倍、パートタイムが2.18倍(※)と、いずれも高い水準にあり、小売業においては慢性的な人手不足が続いていることが分かります。

※東京労働局発行 『職種別有効求人・求職状況/求人賃金状況(令和8年4月分)』より

セルフレジの弱点

コロナ渦の非接触ニーズや、人手不足への対応策として急速に普及したセルフレジですが、同時に次のような運用面の課題も顕在化しています。

  • 買い上げ点数が減少しやすい
    通常レジやセミセルフレジ(※)と比べ、店員ではなく来店客自身が商品の登録から精算までを行うため、負担感から購入点数が減少するケースがあります。

  • バーコードのない商品の登録が煩雑
    青果や鮮魚、惣菜のバイキング等のバーコードを付けられない商品は、商品一覧から該当する商品を選択する必要があり、操作に時間がかかることがあります。

  • アテンダントの負担が大きい
    1人で複数台のセルフレジを担当することが多く、来店客の操作サポートや酒類販売時の年齢確認、不正防止など、幅広い業務を同時にこなさなければなりません。

  • 不正が発生しやすい
    スキャン漏れなどの「うっかり不正」から、意図的な万引きまで、有人レジに比べて不正が起こりやすい環境となっています。

※セミセルフレジとは、支払いを来店客自身の端末操作で行う方式のレジです。完全なセルフ形式のレジとは異なり、商品の登録操作は従業員が行うため、来店客と店舗側の負担をバランスよく軽減する方式といえます。

中でも最も大きな課題は、不正の防止です。 セルフレジでは、来店客の挙動を従業員が逐一確認することは、人員配置の観点から難しいため、不正を見逃すリスクが高まります。その結果、善意の来店客に対しても「不正がないか」という視点で接する場面が増え、従業員の精神的な負担につながります。

▼図表1:セルフレジで発生し得る様々な不正パターン

不正パターン具体的な内容
①カゴ抜け商品スキャンだけして、会計せずに持ち帰る。
②空スキャンJANコード以外の面をかざしたりJANコードを手で隠すなどして実際より少ない点数で会計する。
③単品打ち「ビール6缶」「ソーセージ2点」などのセット売り商品の場合に、セット専用のJANコードではなく単品のJANをスキャンする。
④まとめ打ち同じ商品を複数手に持ち1品だけスキャンする。
⑤ポリ袋の商品の重ね打ちポリ袋に多くの商品を入れ、手前の安い商品のみスキャンする。
もしくは、裸売りの商品をポリ袋に複数入れ数を少なく登録する。
⑥意図的なスキャン忘れ複数商品のうち1~2点をスキャンしないまま買い物袋に入れる。
⑦意図的なパネル登録ミスJANなしの裸売り商品をタッチパネルの商品一覧から選ぶ際、より安価な商品のパネルを意図的に選択する。
⑧バーコード偽装
(もやしパス)
事前に安価な商品のJANをコードを切り取って手に忍ばせておき、別の商品のJANの代わりにスキャンする。
⑨見切り品の複数登録見切り商品を複数購入したと見せかけてスキャンし、実際には通常の商品を買い物袋に入れる。
⑩下段スルー買い物カートの上段にたくさんの商品を置くことで、下段の米や酒など高額商品を見えにくくし、上段商品のみのスキャンで済ませる。
⑪商品落としわざと商品を床に落として拾い、そのままスキャンせずに買い物袋に入れる。

こうした課題の解決策として期待されているのがAI探知の導入です。近年急速に進歩した画像解析AIは、商品の認識や会計動作の分析を通じて、不正行為の検知だけでなく、バーコードのない商品の自動認識やアテンダントの負担軽減にも活用され始めています。

下記の表のように、セルフレジにおいて起こりうる様々なパターンの不正行為に対し、それぞれに防止策を講じることは可能ですが、最も効果の高い店員(アテンダント)による監視・声がけと同等の効果を期待できるのが、AIによる探知チェックです

▼図表2:セルフレジ不正への対応策(現在と将来)

スクロールできます
不正パターン現在の対応策将来普及見込み
防犯カメラレシート
チェックゲート
軽量チェック積層信号灯
(※シグナルタワー)
店員による声掛け店員による監視AI探知チェック
①カゴ抜け
②空スキャン×
③単品打ち×
④まとめ打ち×
⑤ポリ袋の商品の重ね打ち×
⑥意図的なスキャン忘れ×
⑦意図的なパネル登録ミス×
⑧バーコード偽装
(もやしパス)
×
⑨見切り品の複数登録×
⑩下段スルー×
⑪商品落とし×

〇=対策として有効 △=場合によっては有効 ×=対策にはならない

※積層信号灯(シグナルタワー)とは、異常を光や音で知らせる表示灯です。セルフレジでは主に、未精算で退店しようとする「カゴ抜け」を検知した際の警告として利用することができます。一方、スキャン漏れなど、商品登録時に発生する不正へ対応することは出来ません。そういった場合に有効なのが、AI画像認識技術です。

バーコードがない商品(レジ登録ストレスの解消)

不正対策だけにとどまらず、これまでセルフレジの課題とされてきた、バーコードのない商品(“裸売り”とも呼ばれます)の登録も、AI画像認識技術によって解決が進んでいます。

従来のセルフレジでは、丸魚や青果、惣菜バイキングなど、商品にバーコードラベルを貼付できない商品を登録する場合、会計時にレジ画面から商品名や写真を選択し、該当する商品を登録する必要がありました。

しかし、商品名が分からなかったり、似たような写真が並んでいたりすると、登録に時間がかかることがあります。会計のたびに商品を探して操作しなければならず、来店客にとってはストレスとなる場面も少なくありません。

▼図表3:セルフレジの商品登録画面イメージ

あるチェーンストアのレジ教育担当者によると、学生のアルバイトスタッフが魚や青果の名称を覚えることに苦労するケースがあるそうです。例えば、サバとアジ、キャベツとレタスなど、あまり馴染みが無い人には見分けるのが難しい商品もあります。来店客がセルフレジで商品選択に迷う場面も少なくありません。

こうした課題を解決するのが、AI画像認識技術です。
AI画像認識を搭載したセルフレジでは、来店客が商品をカメラにかざすだけでAIが商品を判別し、自動で会計登録を行います。商品名や写真を探す必要がなくなるため、会計操作がよりスムーズになります。

またこの技術の活用範囲は、青果や鮮魚だけにとどまりません。インストア・ベーカリーや寿司バイキングなどバーコードラベルを貼付しにくい商品の会計にも大きな効果を発揮します。

例えば焼きたてのパンは、焼き上がり直後に包装すると蒸気がこもって品質が低下するため、粗熱を取ってから包装・バーコード貼付を行う必要があります。そのため、販売開始まで時間が空いてしまうことが課題でした。

▼図表4:インストア・ベーカリー商品における裸売り(バーコードなし)と包装売り(バーコードあり)の比較

AI画像認識を活用したセルフレジでは、来店客がトレーに載せたパンをカメラで撮影すると、AIがパンの種類を識別し、商品マスタに登録されたPLUコードへ紐付けます。その情報は、Code128などのバーコード形式やAPI連携など、POSシステムに対応した方式で受け渡され、通常の商品と同様に会計処理が行われます。

これにより、バーコードラベルを貼付する工程を待つことなく販売を開始できるため、焼きたての商品をより早く店頭に並べることが可能になります。来店客へよりおいしい状態で商品を提供できるだけでなく、販売機会の損失を減らせる点も大きなメリットです。

現在は主にベーカリー分野で実用化が進んでいるAI画像認識ですが、今後はスーパーマーケットの集中レジへの応用・普及も現実的になっていくことでしょう。実現すれば、バーコードラベルの貼付を前提とした運用を見直すことができ、販売オペレーションのさらなる効率化につなげることができます。

完全自動会計を実現する生態認証レジ

最後に紹介するのが、生体認証を活用した「完全自動会計」の仕組みです。

生体認証レジは、あらかじめ登録した顔や手の静脈などの生体情報を決済手段と連携させることで、スマートフォンやクレジットカードを取り出すことなく、非接触で会計できるシステムです。手の静脈認証を活用した実証実験も進められていますが、本格的な普及にはまだ時間がかかると考えられています。

いわば、昔から使われてきた「顔パス」を、最新技術で実現したような仕組みといえるでしょう。従来の「顔パス」は、受付や警備員がお得意様の顔を覚えていることで、手続きを簡略化することを意味していました。生体認証レジでは、その役割をシステムが担います。

生体認証には、PBI(Public Biometric Infrastructure:公開型生体認証基盤)などの認証技術が活用されています。これは、生体情報を復元できない形に変換して管理する仕組みで、高い安全性を確保できることが特徴です。さらにAIによる画像認識技術と組み合わせることで、認証精度や利便性の向上も期待されています。

【参考・出典】
・日立 公式サイト 「ソリューション&サービス 認証セキュリティ」
https://www.hitachi.co.jp/products/it/security/solution/cyber-security/authentication/pbi/index.html

総括

セルフレジは、新型コロナウイルス感染症の流行を契機とした非接触ニーズや、慢性的な人手不足への対応策として急速に普及しました。一方で、不正防止やバーコードのない商品の登録、アテンダントの負担など、新たな運用課題も明らかになっています。

こうした課題に対し、AI技術は着実に解決策を提供し始めています。画像認識による不正検知や商品の自動識別は、来店客の利便性を高めるだけでなく、従業員の業務負担を軽減し、店舗運営の効率化にも大きく貢献しています。

さらに、生体認証技術との融合によって、会計時の認証や決済もよりスムーズになることが期待されています。将来的には、「商品を選ぶ」「登録する」「支払う」という一連の流れが、より自然でシームレスな体験へと進化していくかもしれません。

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