廃棄がもたらす影響と、小売店に実行できるアクションは? 小売店の食品ロス対策 第1回「食品ロスの現状と社会的課題」

※本記事は全4回構成の連載の一部です
。シリーズ一覧はこちら
※本シリーズは、株式会社アール・アイ・シー刊「食品商業 2026年8月号」掲載の
弊社執筆記事をもとに再編集したものです。
はじめに:サステナビリティの現在地

「食品ロス」という言葉は、すでに多くの人に知られる身近な言葉となりました。しかし、それがもたらす問題の深刻さや、発生する仕組みの根深さまで説明するのは、意外と難しいのではないでしょうか。まずは食品ロスの定義と現状について、改めて整理してみましょう。
食品ロス(フードロス)とは本来、食べられるのに捨てられてしまう食品のことです。
持続可能な開発目標(SDGS)の目標の一つ「つくる責任つかう責任」の中で言及される課題であり、世界中で削減の活動が実施されています。
農林水産省及び環境省の「事業系食品ロス量2023年度推計値」によると、日本では年間約464万トンの食品ロスが発生しています。
食品ロスは、発生する場所や原因によって、大きく「事業系食品ロス」と「家庭系食品ロス」に分けられます。
事業系では、食品製造業における規格外品や製造過程での廃棄、食品小売業における返品や売れ残り、期限切れによる廃棄、外食産業における食べ残しなどが主な発生原因です。
一方、家庭系では、料理の作り過ぎによる食べ残しや、消費・賞味期限切れによる廃棄、野菜の皮を厚く剥くなどの「過剰除去」が主な原因として挙げられます。
この内、事業系の食品ロスが年間約231万トンあり食品製造業108万トン、外食産業66万トン、食品小売業48万トン、食品卸売業9万トンとなっています。
食品ロスがもたらす社会的影響は多岐に渡り、主として以下のような弊害が指摘されています。
・環境負荷の増大:食品の生産、加工、輸送、廃棄の各過程でCO₂が排出されます。まだ食べられる食品が廃棄されることは、それまでに費やされたエネルギーや輸送などの環境負荷も無駄にしてしまうことにつながります。
・経済的損失: 食品ロスによる経済損失は年間約4兆円とも推計されています。食品そのものの価値だけでなく、生産・加工・流通・販売にかかったコストも無駄になるため、事業者にとっても大きな損失となります。
・資源の無駄遣い: 食品を生産するためには、水や肥料、飼料、エネルギーなど多くの資源が必要です。食品が食べられないまま廃棄されると、こうした限りある資源も有効に活用されないまま失われることになります。
▼食品ロスによってもたらされる3つの影響

このように、食品ロスは単に「食べ物を捨てる」ことへの倫理的な問題にとどまらず、環境・経済・資源といった社会全体に関わる現実的な課題となっています。だからこそ、その削減には、企業や行政、そして消費者がそれぞれの立場から取り組むこと求められています。
国は、事業系食品ロスを、2030年度までに2000年度比で半減する目標を立てており、同様に家庭系食品ロスについても半減させる目標を設定しています。
こうした目標を実現するためには、日々の暮らしの中で食品ロスを意識することはもちろん、食品が消費者に届くまでの各段階で、無駄を生み出さない仕組みをつくることも重要です。
その中でも、食品を仕入れ、売場に並べ、消費者へ届ける役割を担う食品小売業は、食品ロス削減において重要な位置を占めています。
ここでは、食品小売業における食品ロスの現状や課題、削減に向けた取り組みについて詳しく見ていきます。
食品ロスへの小売業の取り組み
食品小売業では年間48万トンの食品ロスが発生しており仕入、値引き、廃棄等の作業負担・コスト負担は決して小さくはありません。
食品ロスは単なる廃棄問題ではなく、事業者にとっては「売上を生むはずだった商品」を失う販売機会損失であり、仕入れや保管、値引き、廃棄などの「不要なコストを発生させる経営リスク」でもあります。
食品小売業の納品・販売期限に関するルールの変更
食品業界では、メーカー・卸・小売の間で、商品の製造から賞味期限までの期間を一定の割合で区切り、店頭でいつまで販売するか(販売期間)や、そのために、いつまでに納品出来るか(納品期限)といった期限を設ける商慣習が長く続いてきました。
代表的なのが、いわゆる「3分の1ルール」です。
製造から賞味期限までの期間を3分割し、最初の3分の1を「納品期限」、次の3分の1を「販売期限」、最後の3分の1を消費者が家庭などで食べる期間として設定する考え方です。
このルールのもとでは、販売期限を過ぎた商品は、しばしば値引き販売などの対応が取られますが、それでも販売できなかった場合には、賞味期限まで十分な期間が残っている商品でも廃棄されてしまいます。
ただし、こうした納品・販売期限は法律で一律に定められたものではなく、あくまでも食品業界における商慣習として設定されてきたものです。そのため近年では、食品ロス削減の観点から見直しが進められています。
例えば、納品期限を製造から賞味期限までの「2分の1」まで緩和したり、販売期限を各小売事業者が商品の特性などに応じて設定するなど、従来のルールを柔軟に見直す動きが広がっています。
▼(参考)販売期限と納品期限の緩和
※農林水産省「食品ロス及びリサイクルをめぐる情勢参考資料(令和6年7月時点版)」より引用

ルールの緩和は、店舗にとって商品を販売できる「時間」という資産を増やすことにつながります。販売できる時間が長くなれば、「いつ、どう売るか」を見極める余地も広がり、食品ロスの削減だけでなく、粗利益の改善にもつながります。
粗利益アップの基本は、「廃棄ロスの削減」「値引き率の最適化」「通常売価で販売できる商品の比率向上」です。そのためには、発注や在庫管理、値引きなど、販売現場でのさまざまな取り組みが欠かせません。
食品ロスの削減と店舗の利益確保を両立していくために小売店にできる取り組みのヒントは、日々の売場や店舗運営の中にあります。
次回は見切り・在庫管理・発注など、販売現場で出来る具体的な対策について見ていきます。
第2回を読む
-1-1024x527.jpg)
SP表示-573x1024.jpg)







