「売り切る」「余らせない」を実現するには?
小売店の食品ロス対策 第2回「販売現場での食品ロス削減」

※本記事は全4回構成の連載の一部です
。シリーズ一覧はこちら
※本シリーズは、株式会社アール・アイ・シー刊「食品商業 2026年8月号」掲載の
弊社執筆記事をもとに再編集したものです。
前回は、食品ロスの現状や社会的な影響、業界全体の商習慣が食品ロス問題に密接に結び付いていることなどを見てきました。食品ロスを減らしながら店舗の利益を確保するには、日々の販売現場における工夫が欠かせません。
売場での見切り・値引き

賞味期限・消費期限が近い商品を割引して販売し、売り切る「見切り・値引き」は、店舗において食品ロスを減らしながら販売機会を確保するための最も実行しやすく、効果的な取り組みのひとつです。
主に総菜、弁当、生鮮食品(肉・魚)、日配品(豆腐や牛乳など)が対象となります。また、パッケージの汚れや棚替えのタイミングなど、さまざまな理由で値引き販売の対象となる商品もあります。
値引きのタイミング
多くの店舗で閉店間際に値引きし、夕方から徐々に値引きシール、見切りシールが貼られます。鮮魚や生鮮品、総菜などは午後から商品の売れ行きを確認して、順次割引率(2割から半額以上など)を上げていく「段階見切り」運用をしている店舗が多くあります。また、商品の廃棄率をKPI(重要業績評価指標)として管理することで、目標達成の可能性を高めることに役立ちます。
▼図表1:段階見切りの考え方と事例

こうした段階見切りの運用を支えるのが、値引き・見切りシールやレジシステムなどの工夫です。値引きシールは、単に割引を知らせるだけでなく、売場で商品を目立たせ、購入を促す販売促進の役割も担います。
また、レジシステムと連携することで、シールを貼った商品をスキャンするだけで設定した割引を自動的に適用できる仕組みも導入されています。従来のように割引率をレジで手入力する必要がなくなるため、値引き作業の負担軽減や入力ミスの防止にもつながります。
▼図表2:見切りシールのレジ運用

見切りシールの種類や運用方法については、こちらのシリーズでさらに詳しく解説しています。↓

。シリーズ一覧はこちら※本シリーズは、株式会社アール・アイ・シー刊
「食品商業 2026年7月号」掲載の弊社執筆記事をも…
AIと値引き
近年ではAIを活用して値引き判断を支援する取り組みも広がっています。商品ごとの在庫状況や販売実績に加え、天気予測、来店客数の予測など、様々なデータを元に「いつ、どの商品を、どの程度値引きすれば売り切れるか」をAIが推測し、適切な値引き率や値引き額を提案する仕組みです。
さらに、算出された値引き情報をもとに値引きラベルを自動発行するなど、値引き判断だけでなく、その後の作業まで効率化する仕組みも登場しています。担当者の経験や勘に頼っていた判断をデータで支援することで、食品ロスの削減と作業負担の軽減を同時に目指すことができます。
こうしたAIの活用は、「値引きを自動化する」だけにとどまらず、販売機会をできるだけ維持しながら、廃棄を減らし、店舗の利益も確保するという、食品ロス対策と店舗運営の両立を支える手段の一つといえます。
在庫管理と発注の改善
発注精度の向上と需要予測
ここまで見てきた見切り・値引きは、商品をできるだけ売り切ることで廃棄を減らす取り組みです。一方で、食品ロスを根本的に減らすには、そもそも売れ残る商品を過剰に仕入れないことも重要です。
そこで重要になるのが、在庫管理と発注の精度です。過剰在庫にならないよう、天候や曜日、イベント、過去の販売データなどを考慮し、需要に応じた適正な仕入れを行います。
次の図のようなフローで売数を予測し発注量を決定していきます。
▼図表3:発注精度向上のための仕入フロー

上記のように発注量を適切に決めていくには、店舗で培われた経験やノウハウに加えて、精度改善のためのサイクルを繰り返すことが重要になってきます。
担当者の経験や勘に頼った発注では、担当者による判断のばらつきや、経験の継承といった課題も生じます。そのため、販売実績を振り返りながら予測と結果の差を検証し、発注精度を継続的に改善していく必要があります。
そこで近年活用が進んでいるのが、AIを活用した販売予測・需要予測システムです。
過去の販売データに加え、季節や曜日、天候、イベント、トレンドなどの情報をもとに販売数を予測し、その結果から発注数を自動算出することで、欠品や過剰在庫の削減を支援します。
さらに、リアルタイムな在庫管理や自動発注と組み合わせることで、発注業務そのものの標準化にもつながります。担当者の経験や勘に依存していた業務をデータに基づく仕組みに置き換えることで、発注業務の属人化を解消し、誰が担当しても安定した精度で発注できる環境を目指すことができます。
このように、AIやデータを活用した発注の高度化は、欠品や過剰在庫を減らして適正在庫を維持するだけでなく、食品ロスの削減と店舗の粗利益確保を両立するための取り組みとしても重要になっています。
「売り切る」ための見切り・値引きに加え、「そもそも余らせない」ための発注・在庫管理など、食品ロス削減には、販売現場のさまざまな工夫が求められます。
次回(第3回)は食品ロスの削減に貢献するAI技術と、
店舗での消費者に対する働きかけについて深掘りしていきます。
第3回を読む
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