新規顧客の獲得から既存顧客のファン化まで、販売促進の手法とポイントを全4回で解説!「小売業の販売促進活動」シリーズ公開中。

店内物流を支える“環境”と“人” 店内物流と整流化の取り組み 第4回「バックヤード環境の改善と人員体制」

店内物流 第4回 アイキャッチ画像(PDFなし版)

※本記事は全4回構成の連載の一部です
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※本シリーズは、株式会社アール・アイ・シー刊「食品商業 2026年9月号」掲載の
弊社執筆記事をもとに再編集したものです。

商品が売場に並ぶまでには、バックヤードでのさまざまな作業が欠かせません。

しかし、商品が増えれば、それだけ保管や補充のためのスペースが必要になります。また、売数や時間帯によって作業量も変化するため、バックヤードも常に同じ状態でよいとは限りません。

今回は、需要に応じたバックヤード環境の整え方をはじめ、現場を支える監督者の役割やホウレンソウなど、店内物流を継続的に整流化するためのポイントを解説します。

目次

補充作業を整流化するためのバックヤード環境の見直し

需要予測に合わせたバックヤード環境

補充とは、売場で商品が売れた分を補い、棚に商品を充填する作業です。売数が変動すれば、バックヤードに必要となる商品の種類や数量も変わり、それに伴って補充作業に必要な人時も変動します。

したがって、バックヤードについても需要予測に基づいて必要なスペースを見極め、商品を置くスペースを状況に応じて柔軟に拡縮できるようにすることが重要です。こうした考え方を「スペースマネジメント」といいます。

*スペースマネジメントとは、物理的な空間を効率的に割り当て、活用するための管理手法です。

整理整頓

バックヤードを効率的に使うために、まず不要なモノをなくし、必要なモノを使いやすく保管することが基本です。

備品や販促資材など、現在使用していないものや今後使用する予定のないものは、思い切って廃棄します。また、使用頻度の低いものと日常的に使用するものは分け、それぞれ適した保管場所を設定します。

特に利便性の高い場所には、高回転商品や使用頻度の高い備品など、日常的によく使うものを配置します。また、保管するものは種類ごとに分類し、ラベルなどで表示することで、必要なものをすぐに見つけられる状態にしておきます。

保管場所のルールを整備して「どこにあるか」で迷う時間を減らすことも、バックヤードの作業を効率化するうえで重要な一歩です。

区画線(ライン)

次に、通路と作業区域・在庫区域を明確に分けるため、床に区画線(ライン)を引きます。

ラインを引く目的は、モノの置場・置き方を標準化することです。どこに何を置くのかを明確にすることで、「誰でも分かる」「誰でもすぐに使える」「誰でもすぐに戻せる」環境をつくります。

さらに、ラインによって置場が明確になると、ひと目で「正常な状態か、異常な状態か」を判断できるようになります。ラインは、3S(整理・整頓・清掃)の乱れを防ぐための「見える化」の仕掛けともいえます。

区画線にはペンキを使用することもできますが、後から引き直すことは困難なので、貼り換えがしやすい床用ラインテープ(強粘着・耐摩耗・耐寒・耐水仕様のPET+ポロオレフィン素材)の使用をおすすめします。

梱包用のカラー布テープを区画線として使用する例も見受けられますが、気温や荷重の影響で歪んだり、粘着剤がはみ出したりする可能性があります。床用ラインテープを使えば、シワになりづらいきれいな線を引くことができるほか、耐摩耗性や耐水性などに優れているため引いた線が残りやすいという利点もあります。

①スペースを確保するためのライン
最初にラインを引くのは消防設備やシャッター、扉の開閉スペースの付近です。これは、ラインをまたいで通行すること自体を禁止するものではなく、「ここにはモノを置かない」という注意を促すことが目的です。赤色や黄色と黒の縞模様のテープなど、視認性の高いものを使用して、誰が見ても注意すべき場所だと分かるようにします。

▲図表1:非常時に消火栓をすぐ利用できるようにする
▲図表2:シャッター周辺のクリアランスを確保する

②通路用のライン

次に、通路を明確にするためのラインを引きます。通路は安全性を第一に考え、できるだけ直線的に設定します。特に、見通しが悪く衝突事故のリスクが高まるカーブやクランクは、なるべく作らないようにします。

通路はまず、店舗内の主要な物流動線となる「主通路」を優先して確保します。そのうえで、台車への集品や開梱などの作業に使用する「サブ通路」を、作業場や在庫置場の配置を考慮しながら設定します。

主通路としては、「荷受け場 → バックヤード → 売場」と、「売場 → バックヤード → ゴミ集積場」という2つのルートを確保します。主通路の幅は、2台のカゴ台車がすれ違える程度の約150cmを目安とします。

また、台車への集品や開梱などの作業を行うためのサブ通路については、約90cm程度の幅を確保します。

▲図表3:主通路とサブ通路に必要とされるスペース

③ 台車・備品の置場に引くライン

最後に、台車や治具、備品などの置場にもラインを引き、「定物定位」を行います。あらかじめ置場を決め、ラインで明確にすることで、使用後も決められた場所へ戻すことができ、必要なものをすぐに使える状態を維持できます。

特に台車をいつでも使える状態にしておくことは、補充作業の効率化につながります。台車を使わず、少量の商品を手に持って何度も売場まで運ぶと、運搬回数が増え、作業に時間がかかります。台車を所定の位置に配置し、必要な商品をまとめて運搬できるようにすることで、一度に運べる量を増やし、運搬効率を高めることができます。

④清掃用具の置き場に引くライン
ほうき、モップ、ぞうきん、ちり取り、バケツ等は、定物定位の置場を確保しバックヤードのレイアウトに組み込みます。日常清掃は、清潔を維持するだけでなく、異常を感知する保全活動(清掃点検)に繋がるため、レイアウトから落としてはならない必須の設備です。

現場監督者の設置とコミュニケーションの強化

補充作業は、作業者それぞれが同じ工程を繰り返す場面が多いものです。そのため、「マニュアルに沿って作業すればよい」と、個々の作業者に任せてしまいがいちですが、実際には、作業を高い品質で時間内に終わらせるために、現場全体を見渡し、作業を調整する「司令塔」としての人員が不可欠です。

こうした役割を担うのが「現場監督者」です。現場監督者は、作業の進捗を確認し、必要に応じて作業方法を是正するほか、安全確保、作業の割り振りや調整、完了確認、勤務管理などを行います。

また、作業者をまとめて現場を運営するだけでなく、売場主任や店長ともコミュニケーションを取りながら、店舗の状況に応じて計画的に作業を進めることも重要な役割のひとつです。朝礼や終礼を行うことで、作業に必要な情報をチーム内で共有することができます。

朝礼では、事故防止や円滑な作業進行に必要な情報を共有します。特に、過去に発生したヒヤリハット事例を共有するとともに、作業者の健康状態も確認します。

終礼では、その日の作業を振り返り、良かった点や改善すべき点を共有するとともに、翌日の作業に必要な引き継ぎを行います。

こうした情報共有は口頭だけでなく、ホワイトボードや掲示板なども活用すると効果的です。全員が同じ情報を目で確認できるようにすることで聞き逃しを防げるほか、チームとしての一体感の醸成にも役立ちます。

▲図表5:チームとして情報を共有するための掲示板

また、日々の作業を一時的な成果で終わらせないためには、現場で得られた情報を改善につなげていくことも重要です。

業務終了後、現場監督者はその日の作業状況や気づいた点などを売場主任に報告します。売場主任は報告をもとに現場の運営状況を把握し、必要に応じて関係する管理者と調整しながら、作業方法や体制の改善につなげます。

このように、現場での情報共有と業務報告を継続することで、日々の作業状況を把握し、改善を積み重ねていくことができます。

補充作業の専門チーム化

ここまで紹介してきた数々の工夫に加え、さらなる整流化を目指した取り組みとして、補充作業に特化した「部門横断的な専任チーム」を組織するというメソッドがあります。主に大型店や長時間営業の店舗などで取り入れられ、近年効果を上げています。

従来の補充作業は、売場部門の担当者が自ら行うことが一般的でした。これに対して専任チーム方式では、売場部門とは別に補充を専門に担当する人員を配置し、部門の枠組みに囚われずに作業を行います。

補充を専門化することで、作業に必要なスキル・ノウハウを蓄積しやすくなるほか、売場担当者は補充以外の業務に時間を充てることができます。また店舗全体の人員配置や作業分担を見直すことで、ローコストオペレーションにつなげることもできます。

専任チームの担当業務は、商品の補充や売場整理だけでなく、見切り作業まで含めるケースもあるようです。補充や売場の維持に関わる作業を集約することで、売場部門の担当者は販売計画や売場づくりなど、より中核的な業務に専念することができるようになります。

さいごに

店内物流 第4回 ヘッダー2

製造業などの品質管理には、「品質は工程で作りこむ」という考え方があります。これは各工程の担当者が必要な作業を抜け漏れなく確実に行い、次の工程へと引き渡すことを繰り返して、最終的な品質を高めていくという考え方です。

小売業の店内物流も同じように考えることができます。商品を受け取り、運び、補充し、不要になったものを回収する。それぞれの工程を整え、次の工程へスムーズにつなげていくことが、店内物流全体の「整流化」につながります。

本シリーズで紹介したように、店内物流にはさまざまな工夫があります。店舗の規模や営業時間、売場の特性などを踏まえ、自社にとってどのような店内物流のあり方が適切なのかを検討していただければ幸いです。

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