売場だけじゃない!作業効率を大きく左右する在庫管理の秘訣 売場とバックヤードの棚割 第3回「バックヤードの棚割の維持管理」

※本記事は全4回構成の連載の一部です
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※本シリーズは、株式会社アール・アイ・シー刊
「食品商業 2026年5月号」掲載の
弊社執筆記事をもとに再編集したものです。

第2回では、売場における棚割のポイントや陳列についての基本ルールについて見ていきました。
今回は、バックヤードの棚割における重要なポイントを詳しく見ていきましょう。
バックヤードの棚割のポイント
まず、バックヤードとは、本来「在庫置場(ストックヤード)」「荷受場」「事務室」「休憩室・更衣室・トイレ等の共有スペース」、そしてそれらをつなぐ「通路」から構成されるエリアを指します。商品管理や補充作業について扱うこのシリーズにおいては、基本的に「在庫置場(ストックヤード)」のことを「バックヤード」と呼称しています。
売場だけではなく、この在庫置場にも「棚割」が存在します。
商品をどのように配置するかで、補充作業のしやすさや在庫の把握精度が大きく変わります。
売場の棚割が、来店客と従業員双方に向けた仕組みであるのに対し、バックヤードの棚割は、すべて従業員向けの設備・情報です。
特に重要なポイントとして、①在庫保管用の什器に「中分類札」を取り付けることと、②在庫の置き場所に「在庫内容ラベル」を取り付けることが挙げられます。 この2点について、詳しく見ていきましょう。
中分類札での管理
バックヤードの棚割は、商品分類コードごとに置き場所を区分することで管理します。
在庫保管に使用する棚台車やスチールラックなどの什器には部門コード(中分類)と部門名称を明記した「中分類札」を取り付け、どのカテゴリーの商品が保管されているか分かるようにします。また、異なる分類コードの商品を同じ棚に保管する場合は、仕切り板などを設置し、商品の混在を防止します。
▼図表1:中分類札の運用

「中分類」とは、商品分類の単位のひとつです。
例えば、「グロサリー」という大分類の中に「調味料」という中分類があり、次に「醤油」という小分類、そして「薄口醤油」という細分類、さらに個別の商品(単品)が存在します。
このように店内全体の膨大な商品群を階層化して捉えることができます。
▼図表2:中分類とは

バックヤードの棚割管理においては、このうちの「中分類」単位で商品の置き場所を整理することで、在庫の把握や補充作業を行いやすくしています。
在庫内容ラベルでの管理
バックヤードでは、中分類ごとに商品の配置を整理すると同時に、在庫の状態を表すラベルで区別することで管理します。
▼図表3:在庫内容ラベルのイメージ

「在庫内容ラベル」は、在庫の状態や用途を区別して管理するためのものです。
基本的には、「定番」(補充残・安全在庫など)、「特売」(特売期間用の待機在庫)、「返品」(返品作業待ち)、「廃棄」(廃棄作業待ち)といった区分で管理します。これが、バックヤードにおける棚割の基本的な考え方になります。
在庫内容ラベルの使用にあたっては、「カットケース陳列」(段ボール箱の上部をカッターなどで切り取り、そのまま棚に並べる方法)を用いたり、棚から商品が転げ落ちないよう、バット(長方形の浅い皿状の容器)を活用するなどして保管します。
重要なのは、在庫の内容や状態が誰でもひと目で分かるようにしておくことです。
商品をオリコン(折りたたみ式コンテナ)や段ボール箱に収めたまま積み重ね、内容が見えない状態で保管してはいけません。正常品・異常品を含め、在庫の状態を可視化することで、補充や在庫確認を正確かつスムーズに行いやすくなります。
▼図表4:商品が見える状態での在庫内容ラベルの使用

下図のように、中分類札と在庫内容ラベルを併せて用いることで、バックヤード商品の保管場所と在庫の状態を同時に把握した上で作業を進めていくことができます。
▼図表5:在庫内容ラベルと中分類ラベルの併用

在庫を「みえる化」する理由
POSシステムの在庫データには、「どこに在庫があるか」という場所情報までは登録されていません。
例えば、売場に3個、バックヤードに5個の在庫があった場合でも、POS上では合計8個の在庫として表示されます。POS在庫が示しているのは、あくまでも「店内全体の総在庫」です。
▼図表6:POS在庫と実際の在庫

もし来店客から「売場には3個しかないが、あと10個欲しい」という申し出があった場合、POS在庫が15個あれば、バックヤードに12個あると推定できます。
とはいえ、POS上で在庫データが存在していても、実際の在庫状況と完全に一致しているとは限らないため、バックヤードの現物を確認する必要があります。
このとき、バックヤードの整理整頓ができていなければ、商品を探し出すまでに時間がかかり、結果として来店客を待たせてしまいます。
こういった事態を防ぐため、バックヤードでは「中分類札」や「在庫内容ラベル」を用い、従業員の習熟度を問わず、スムーズに商品を探せる状態を維持する必要があります。
在庫位置までデータ化することは可能か?-小売店舗と物流倉庫の違い-
本記事を読んで、「在庫の置き場所もデータで管理できれば便利なのでは?」と感じられる方もいらっしゃるかもしれません。実際、工場や物流センターでは、置き場所ごとの在庫数をリアルタイムで管理するシステムも導入されています。固定化された動線に基づき、ケース単位・パレット単位で在庫管理されることが多い工場や物流倉庫は、ハンディターミナルでの逐次的なデータ反映など、位置情報まで含めたシステム化と高い親和性があります。一方、店舗では来店客が商品を手に取る→レジで会計(在庫数に反映)→補充作業といったように、商品が個品単位で頻繁に動きます。そのため、仮にすべての位置情報をリアルタイムで管理しようとすると、計り知れない運用負荷・コストが発生してしまうことでしょう。AIカメラなどを活用した位置管理技術も登場しており、将来的には在庫管理のあり方が大きく変わっていく可能性もありますが、現在の小売店舗では、「中分類札」や「在庫内容ラベル」のような目視で確認できる表示を用いた管理方法が、現実的かつ効果的な方法として広く採用されています。
バックヤードの先入れ先出し
売場だけでなく、バックヤードにおいても「先入れ先出し」を徹底することで、賞味期限のチェック作業や清掃作業が容易になり、自然に業務効率や商品の品質を維持できる体制が整います。
その際、在庫を段ボールのまま積み重ねるだけでは、先に入荷した商品が奥や下に埋もれ、取り出したい商品になかなか辿り着けません。収納棚を適切に用いることで、無理なく先入れ先出しを成立させることができます。
▼図表7:在庫をそのまま積み重ねると…

▼図表8:棚を使って収納すれば…

商品の搬入や補充作業と結びついてるバックヤードは来店客から直接見える場所ではありませんが、その運用方法は売場の状態(欠品防止や商品ロス削減)にもつながる大変重要な要素です。
普段何気なく目にしているバックヤードの風景も、あらためて見直してみると、現場改善のヒントが見えてくるかもしれません。
最終回となる次回は、売場の訴求性を高める工夫や、日々の業務に欠かせない安全対策に焦点を当てていきます。
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