来店客にも従業員にもやさしい店舗づくり 売場とバックヤードの棚割 第4回「現場改善と労働災害の防止」

※本記事は全4回構成の連載の一部です
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※本シリーズは、株式会社アール・アイ・シー刊
「食品商業 2026年5月号」掲載の
弊社執筆記事をもとに再編集したものです。
第3回では、「バックヤードの棚割の維持管理」について説明しました。
最終回となる今回は、現場の改善につながる視界・高さについての考え方や労働災害防止の基本など、棚割運用に関連するさまざまなポイントについて整理していきます。
改善とは、作業を「安全に」「正しく」「早く」「より楽に」行うための取り組みです。
現場では、日々の作業の中で積み重ねられてきた多くの知恵や工夫があります。
一見すると小さな工夫でも、作業効率や安全性に大きく影響することがあります。
ひとつずつ見ていきましょう。
人の視界
売場の棚割には、「ゴールデンゾーン」という考え方があります。これは来店客が商品を見つけやすく、選びやすい範囲を表す言葉です。
同様に、従業員にも「作業しやすい視界」があります。
一般的に、人の有効視野は上下約60度、左右約70度程度と言われています。また、至近距離よりも少し離れた位置のほうが、視界全体を広く捉えやすくなります。
視界から外れた場所は異常に気付きにくく、商品整理や清掃、賞味期限チェックなどの作業で漏れが発生する原因になります。棚の上段や下段など、視界から外れやすい場所ほど意識的な確認が重要です。
▼図表1:人の視界

人の身長と陳列の高さ
視界についての項で述べたように、棚什器の最下段には高さの異なる製品があります。
これは、来店客の視界から商品が外れにくくするだけでなく、商品を手に取りやすくするための工夫でもあります。
什器メーカーでは、最下段の高さを最低12cmから、5cmないしは10㎝刻みで高くした製品をラインナップしています(大型のものでは最下段が60cmほどの高さがあります)。
最下段を高くすると商品は見やすく・取りやすくなりますが、その分だけ陳列スペースは減少します。
また、従業員の作業面から見ても、身長によって作業しやすい高さがあります。
頭より上の高さや、反対に腰より低い位置での作業は負担が大きく、“作業がしづらいゾーン”であると言えます。
そのため、日常的によく補充する商品や重量物などは、できるだけ無理の少ない高さへ配置することが重要です。
▼図表2:高さで変わる作業のしやすさ

2つの“作業がしづらいゾーン”(「頭より上」と「腰から床まで」)での作業を行う際には、それぞれに注意点があります。
腰から床までの高さで行う作業
腰から床までの低い位置での作業を行う場合は、腰痛を防ぐため、腰を曲げたり捩じったりはせず、必ず膝をついて作業するようにしましょう。
▼図表3:腰から床までの高さの作業

また、膝をついて作業する場合には、必要に応じて作業用ニーパッドを装着したり、サウナ座布団や段ボールの切れ端を膝の下に敷いたりすると、膝への負担を軽減し、安全かつ楽に作業を行うことができます。
▼図用4:肘をついた作業を補助するもの

頭より上の位置で行う作業
頭より高い位置で作業する場合は、無理に手を伸ばさず、「踏み台」や「脚立」を使用して作業しましょう。
特に、高所作業ではバランスを崩した際の転倒事故が発生しやすいため、注意しましょう。
「踏み台」や「脚立」は便利な道具ですが、使い方を誤ると労働災害につながる危険もあるので、正しい使い方を理解しておくことが重要です。
▼図表5・6:高所作業の正しい方法と注意点

| 注意するポイント | 未然に防げる事故・トラブル |
|---|---|
| ①天板に乗る時は、身体が天板の中心にくる位置に立つ。 | 天板の端に乗ると重心が崩れ転倒 |
| ②台から体を乗り出さない。 | バランスを崩し転落 |
| ③台は棚割の正面に設置し、作業時は身体を捩じらない。 | 転落や腰痛 |
| ④つま先立ちで乗らない。 | バランスを崩し転落 |
現場作業 その他の注意点・ポイント
■体の向き
陳列などの作業を行う際は、什器の高さに関わらず、体が棚割に正対した位置で作業することを意識しましょう。
些細なことのように思えますが、体を捩じった状態での作業は、腰や肩への負担が大きくなり、作業効率の低下や疲労の蓄積につながります。
▼図表7:作業を行うときの体の向き

■台車を作業台として使う
一般的な2段棚台車の上段は約73cmの高さがあり、JIS規格でも作業台の標準的な高さは70〜80cm程度が安定して作業しやすいとされています。
そのため、上段を活用することで、腰を大きくかがめることなく、開梱作業や商品の仮置き、POPの仕分け、見切り作業などを行うことができます。、台車メーカーでも、多くの製品では作業台としての使用を想定しています。
一方、下段は重心が低く安定しているため、米や飲料など重量物の運搬に適しています。
▼図表8:作業台としての台車

■重量物を持ち上げる
納品物の処理やバックヤード整理の際などにありがちな、重い荷物を持ち上げるシンプルな動作にも、実はケガを防ぐための重要なポイントがあります。
特に、重量物を持ち上げる際の姿勢が悪いと、腰へ大きな負担がかかり、腰痛や労働災害につながる原因になります。
日常的に行う作業だからこそ、正しい動作を意識することが大切です。
▼図表9:重量物を持ち上げるときのポイント

■フック陳列での前進立体陳列作業

フック陳列の商品で先入れ先出しを行う際、奥の商品を引き出そうとして商品を落としてしまった経験はありませんか?
そこで便利なのが、「前陳棒(ぜんちんぼう)」と呼ばれる、先端が鈎状になった道具です。
これを使うことで、フック奥の商品を引き寄せやすくなり、前進立体陳列や先入れ先出しをスムーズに行うことができます。
「前陳棒」は簡単に自作することが可能です。材料には、建築資材として販売されている「番線(ばんせん)」を使用します。一般的には「#8(4.0mm)」程度の太さが使いやすく、ホームセンターなどで購入できます。番線を適度な長さに切り、持ち手部分を取り付けると完成です。現場でのいつもの作業を少し楽にする工夫として、ぜひ取り入れてみてください。
▼図表11:前陳棒をつくる

■ウエストポーチの活用
筆記用具やカッターナイフ、カウンタークロス(吸水性が高く、速乾性のある使い捨てふきん)、前陳棒などの用具は、ウエストポーチに入れて携帯すると便利です。
必要な道具をいつでも取り出せるようにしておくことで作業効率の向上につながるだけでなく、両手を空けた状態で作業できるため、商品整理や補充作業を安全かつスムーズに行いやすくなります。
特に、脚立や踏み台を使う場面では、手に道具を持たない状態を維持することが安全面でも重要です。
図表12:装備を整え、快適かつ安全な作業体制に

おわりに

以上、単純なようで奥が深い「棚割」について、売場とバックヤードの両面から説明してきました。
棚割は、単に商品を並べるための工程ではなく、来店客の買いやすさや従業員の作業性、安全性、さらには在庫管理や店舗運営全体の品質を支える重要な仕組みです。
近年、レジ業務や発注、清掃、接客など、さまざまな業務の自動化が進んでいます。今後はより多くの作業が効率化されていくかもしれません。
しかし実際の売場では、商品の陳列や整理整頓など、多くの作業が今も人の手によって支えられています。そして、その作業を安全に、正しく、効率よく行えるように設計することも、棚割・売場に携わる担当者の重要な役割のひとつです。
日々の補充や整理整頓といった基本作業を丁寧に積み重ねていくことが、これからの現場を支える力になります。ひとつひとつの棚づくりが売場の印象を変え、やがて店舗全体の価値向上につながっていくのです。
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