「減らす」だけでなく、「活かす」の実現も目指す 小売店の食品ロス対策 第4回「循環型社会に向けた食品ロス削減の取り組みと今後の展望」

※本記事は全4回構成の連載の一部です
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※本シリーズは、株式会社アール・アイ・シー刊「食品商業 2026年8月号」掲載の
弊社執筆記事をもとに再編集したものです。

第3回では、AIによる需要予測や値引きの最適化、てまえどりや予約販売など、食品ロスそのものを減らすための取り組みを見てきました。
一方で、さまざまな対策を講じても、すべての食品を廃棄せずに済ませることは容易ではありません。そこで重要になるのが、廃棄されるはずだった食品を、別の価値へとつなげるという発想です。
フードバンクやフードドライブによる食品の有効活用、飼料・肥料化などの食品リサイクル、さらに規格外品の商品化やアップサイクルなど、その方法はさまざまです。ここでは、食品ロスを「減らす」だけでなく「活かす」という視点から、小売業における食品ロス削減の次のステップを考えていきます。
フードバンク-食品を寄付するという発想-
フードバンクとは、まだ食べられるにもかかわらず、さまざまな理由で市場に流通できなくなった食品を企業や個人から寄付として集め、困窮世帯など、食を必要とする人々へ届ける活動です。
小売店においても、販売しきれなかった食品をフードバンクへ寄付することで、廃棄を減らしながら社会貢献につなげることができます。
寄付を行うには、フードバンク団体への直接持ち込みや郵送のほか、スーパーマーケットなどに設置された「フードドライブ」ボックスを利用する方法があります。
寄付できる食品は、米・麺類、缶詰・瓶詰め、インスタント・レトルト食品、調味料、お菓子、飲料など、基本的に常温で保存できるものが中心です。また、賞味期限まで一定の期間が残っていることや、未開封であることなど、受け入れ先によって条件が設けられています。
一方、冷蔵・冷凍食品、生鮮食品、酒類(みりん・料理酒を除く)、店舗での包装がない手作り食品などは、衛生管理や保存上の理由から、原則として寄付の対象外となります。

食品の有効活用
食品廃棄物のリサイクル
販売することができない食品をそのまま廃棄するのではなく、飼料や肥料、エネルギーなどの資源として再利用する食品リサイクルも、食品ロス削減において非常に重要です。食品リサイクル法に基づき、食品廃棄物の発生抑制や再生利用が進められています。
コーヒー豆かすや野菜くずなどを加工し、畜産用の飼料として再利用したり、調理くずや売れ残った食品などを分解・発酵させ、農業用の肥料として活用するのが主な方法です。
また、食品廃棄物を発酵させてメタンガス(バイオガス)を発生させる「メタン発酵」という活用方法もあります。発生したバイオガスは、発電や熱利用などのエネルギーとして活用することができます。
このように、食品廃棄物を単なる「ごみ」として処理するのではなく、飼料・肥料・エネルギーへと循環させることで、食品ロス削減と資源の有効活用を両立することができます。

■食品リサイクル実施事例
食品リサイクルは、単に廃棄物を処理するだけでなく、新たな資源として店舗や地域の中で循環させる取り組みにもつながっています。ここでは、実際に行われている代表的な事例を紹介します。
【飼料化】
コンビニやスーパーマーケットから出る売れ残りのパンや弁当などを回収し、液体状の飼料(リキッドフィード)として加工。養豚農家へ提供し、そこで育てられた豚を原料として再び弁当などの商品に活用することで、食品を循環させる「リサイクルループ」につなげる取り組みがあります。
【肥料化】
店舗から出る調理くずや売れ残りなどの食品廃棄物を肥料として再生し、その肥料を使って栽培された野菜や米などを、再び同じ店舗で販売する取り組みも行われています。食品廃棄物を農業資源として活用することで、地域内での循環にもつながります。
【メタン化】
飲食店や食品工場などから食品廃棄物を回収し、メタン発酵によってバイオガスを生成。そのガスを利用して発電し、電力として地域に供給する取り組みもあります。食品廃棄物をエネルギーへ転換することで、資源の有効活用につなげています。
食品廃棄物のアップサイクル
本来、廃棄される食品を別の資源として再利用するだけでなく、製造副産物や未利用部位などに新たな価値を加え、商品として生まれ変わらせる「アップサイクル」も注目されています。
例えば、ブロッコリーの芯、ナスのヘタ、大根の皮など、これまで廃棄されていた部分を乾燥・加工し、スナック菓子やディップ(ソースやペースト)などの新たな食品へと生まれ変わらせるといった取り組みが行われています。
単なる廃棄物の削減にとどまらず、「廃棄されるもの」から「新たな商品」へと価値を転換することが、アップサイクルの特徴です。
規格外野菜の有効活用とブランド化
形や大きさ、色などが市場の基準に合わない「規格外野菜」も、味や品質に問題がないものは多くあります。こうした野菜を廃棄せず、加工や販売方法を工夫して新たな商品として価値を与えることは、食品ロス削減と農家の収入向上を両立する取り組みです。
代表的な方法として、以下のような商品化が進められています。
・乾燥・パウダー化
ほうれん草や人参などの規格外野菜を乾燥・パウダー加工し、焼き菓子やスープなどの原料として活用します。形や大きさに左右されにくく、保存性を高めながら新たな用途を生み出せることが特徴です。
・「訳あり」ブランドとしての販売
規格外であることを隠すのではなく、その特徴を商品の個性として打ち出し、ブランド化する方法もあります。例えば、アスパラガスの形状をチンアナゴに見立てて「チンパラガス」と命名したり、一部が黒く変色したトマトを「闇堕ちトマト」として販売し、SNSなどを通じて話題を集めるなど、工夫を凝らしたプロモーションが展開されています。
・加工食品への活用
規格外の人参や玉ねぎなどを原料として、ドレッシング、ジュース、ジャムなどに加工する方法もあります。生鮮品としては販売しにくい野菜でも、加工することで新たな商品として販売することができます。
地域とつながる食品ロス削減
食品ロス削減の取り組みは、店舗内での廃棄削減だけでなく、地域や社会と連携した活動へと広がっています。
例えば、一部のスーパーマーケットでは、「てまえどり」の普及と子ども食堂への寄付を組み合わせたキャンペーンを実施しています。対象商品に「もぐもぐシール」を貼り、消費者に販売期限の近い商品を選んでもらうことで食品ロスを削減するとともに、取り組みを通じた子ども食堂への支援にもつなげています。
また、一部のコンビニエンスストアでは、店頭にフードドライブの回収ボックスを設置し、家庭で余っている食品を回収する取り組みも行われています。店舗を地域の食品循環の拠点として活用することで、家庭から出る食品ロスの削減と、食を必要とする人への支援を同時に進めることができます。
【参考・出典】
もぐもぐチャレンジ | いっぱい食べて地球を救う?「もぐにぃ」登場!
https://mognny.fun/challenge/
さいごに:食品ロス対策と企業価値

日本の食品ロス量は、SDGsの目標設定や物価高、企業による取り組みなどを背景に、近年減少傾向にあります。一方で、日本人1人あたりに換算すると、毎日おにぎり約1個分(約103g)の食べ物を捨てている計算になります。
食品ロスには「事業系食品ロス」と「家庭系食品ロス」があり、その約半分が事業系にあたります。食品ロス削減には事業者と家庭の双方の取り組みが必要ですが、事業者には事業活動の中で可能な限り削減することが求められます。
日本政府も「食品ロス削減推進法」に基づき、2030年度までに2000年度比で食品ロスを半減させることを目指し、対策を進めています。
また、過剰な生産・製造や販売によって発生する食品ロスは、仕入・生産コストや廃棄コストなどにもつながり、経営への影響も無視することはできません。小売業における食品ロス削減を単なる「廃棄削減」ではなく、売上高・粗利益・営業利益といった経営指標の改善につながる取り組みとしても捉えることが重要です。
仕組みや運用を整えるだけでなく、社内の「意識向上」も欠かせません。食品ロス削減を企業価値の向上につながる取り組みとして共有し、従業員教育や廃棄率・ロス率のKPI設定などを通じて、一人ひとりが食品ロスを他人事ではない問題として捉え、日々の現場での主体的な行動につなげることが重要です。
このような取り組みを通じて、食品ロス削減とESG・SDGsを経営に統合していくことは、企業としての社会的評価や投資家からの評価にもつながります。
これまで、食品ロスの現状や、小売現場でできるさまざまな対策や取り組みについて見てきました。
食品ロスの削減を実現するには、現状を知り、売場や発注など日々の業務を見直すことが欠かせません。
さらに、データやテクノロジーを活用し、仕組みとして継続的に改善していくことも重要です。
従業員の意識と現場の工夫、そして食品ロスを経営課題として捉える姿勢を積み重ねることで、地球環境への配慮だけでなく、企業の持続的な成長にもつながります。
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